【木浦市長】 |
最初に、大型店の出店についてのお尋ねにお答えいたします。
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まず、「これ以上の大型店の進出は好ましくない」といってきたが、今の状況を踏まえ、これを具体的にどう実現していくのか、とのご質問にお答えいた.します。
平成12年の大規模小尭店舗立地法、いわゆる大店立地法の施行により規制緩和が進み、旧法にあった商業調整機能の排除によって自治体が意見具申できる範囲が、出店地周辺の生活環境保持の観点のみに限られてしまったことなどから、全国的に大型店の郊外進出が進んできたことは、ご案内のとおりであります。
当市における大型店の状況でありますが、全小売業の売場面積に占める1千uを超える大型店の売り場面積の割合は、2月末現在で、合併前の上越市の範囲では74.6%、これに13区を加えた市全体では、69.2%となつております。店舗数で申し上げますと、合併前の上越市では40店舗、市域全体では45店舗ありますが、このうち1万uを超える大型店は4店舗であり、2/3以上は商圏が限られる3千u以下の店舗であります。
このような状況の中、私はこれまで、地域経済を支えてこられた地元卸・小売業者の皆さんへの影響が大きいことから、「郊外型の大型店の出店は望ましくない」と申し上げてまいりました。また、こうした考えの下、大型店の出店に際し、地方公共団体が地域の実情に即した調整が行えるよう、全国市長会を通じて、あるいは直接国へと再三にわたり、法の見直しを要望してきたところであります。
国では、郊外での大型店の開発が進み、市街地が寂れてしまうといった全国的な動向も踏まえ、都市計画法や中心市街地活性化法、大店立地法の、いわゆるまちづくり三法の改正に取り組み、現在開会中の通常国会で審議されているところであります。
改正の内容を見ますと、都市計画法の改正については後ほど詳しくお答えいたしますが、床面積1万uを超える店舗などについて立地を制限する内容になっております。また、中心市街地活性化法では、商業の活性化だけでなく、中心市街地への都市機能集積促進やまちなか居住促進などといったまちづくりの観点に重きを置き、内閣総理大臣が認定した基本計画事業への集中支援を明確にしていることから、一定の評価をしております。
しかしながら、要望の主旨であつた大店立地法の改正はなく、大型店の出店に際した調整機能は実現しなかったことから、厳しい現状に直面している地方の立場から、今後も引き続き、国に対して改善を求めてまいりたいと考えております。
また、このような現状を打開していくためには、大型店にないサービスの提供や消費者ニーズを反映した品揃えなど、事業者自らの努力も不可欠であり、産業振興課等が高田本町へ進出する中で、事業者の皆さんにも奮起していただき、手を携えて活性化に取り組んでまいります。
さらに、法改正の意義を生かすべく、部門横断的なチームの構築も視野に入れ、組織全体で適正な土地利用や中心市街地の活性化など均衡ある発展の方策を探つてまいりたいと存じます。
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次に、国が都市計画法を改正し、大型店の出店を一部制限する方向を打ち出しているが、どう考えるか、とのご質問にお答えいたします。
国は、まちづくりに大きな影響を与える大型店の無計画な郊外開発に対する抑制策の一環として、今回、都市計画法及び建築基準法等の改正案を国会に提出いたしました。
改正案では、床面積が1万uを超える店舗・映画館・アミューズメント施設などを特定大規模建築物…いわゆる大規模集客施設と位置付け、現在、これらの施設が立地可能となっている都市計画法の用途地域のうち、第2種住居地域・準住居地域・工業地域を対象から外し、商業地域・近隣商業地域・準工業地域の3地域に限定するものであります。
また、一市町村の範囲を越えてまちづくりに影響を与える大規模集客施設の立地について、新たに土地利用に関する都市計画を定めるときは、県が関係市町村との広域的な意見調整を行い、同意しなければ都市計画の決定・変更ができないこととなりました。
その一方で、大規模集客施設の立地に対し、地域の判断を適切に反映させる仕組みとして、規制強化が行われる地域についても、一定の都市計画の手続きを経ることにより規制を緩和する制度が新設されることになっております。
今回の改正案は、その内容を見る限り、まちづくりに影響を与える大規模集客施設の立地に関しては、まず、地域全体に一定の規制を行い、地域の選択によって規制の解除が行えるものとなつております。
つまり、大型店をまちの中心部以外から、一切閉め出すという「マイナス指向」のものではなく、どこに立地することが適当であるか地域の皆さんと議論した上で判断し、地域が進めるまちづくりの中で決めていくものとなっております。
このような主旨は、住民主体のまちづくりを進める当市といたしましても、一定の評価ができるものと考えております。
大型店の立地も含めたまちづくりのあり方については、今後とも市民の皆さんや多くの関係者の方々と議論を重ねて判断してまいりたいと考えております。
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次に、まちづくりに様々な影響を及ぼす大型店の出店計画に対して、まちづくりの視点から制定した「福島県商業まちづくりの推進に関する条例」に対する評価についてのご質問にお答えいたします。
「福島県商業まちづくりの推進に関する条例」は、複数の市町村に影響を及ぼすような大型店の出店について、広域のまちづくりの見地から、適正に配置できるよう調整することを目的とした条例であり、今年10月に施行されるものであります。具体的には、店舗面積が6千u以上の大型店の出店に際し、県への届出や住民説明会を義務付けるとともに、中心市街地に立地を促す基本方針に反する場合は立地場所の見直しも勧告し、従わない場合はその事実を公表するほか、新設等の届出義務に違背した場合には罰金を科すなど、事実上、出店を規制する内容となっております。
しかしながら、まちづくり三法が改正されますと、対象となる大型店の面積要件などで、条例と法律との間に不一致が生ずることになりますし、また、事実上の需給調整であり、法律の範囲を逸脱しているとの指摘があることも耳にしておりますことから、課題も抱えていると認識しております。
とはいえ、中心市街地活性化も視野に入れながら、大型店の配置をまちづくりの視点で判断していくものであるという点と、当市が大型店出店に対して地方公共団体の調整機能を求めてきたという点から、広域調整が可能となる県の取組みとして一定の評価ができるものと考えております。
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次に、売場面積に占める大型店の比率が8割近くになる当市で、これ以上の出店を制限するために独自の条例を制定する考えはないか、とのご質問にお答えいたします。
前段で申し上げたとおり、当市における大型店の売場面積の占有率は7割ほどとなつていることから、今回の都市計画法の改正で、まちづくりに大きな影響を与える1万u以上の大型店の無秩序な郊外開発に一定の歯止めがかかるものと考えております。
また、これも先ほど説明させていただきましたが、複数の市町村に影響を与える大型店の立地について、県が関係する市町村の同意を得ながら土地利用に関する都市計画を決定、または変更するという広域的な調整を行う仕組みが導入されることとなつております。
こうしたことから、仮に、市独自の条例を制定するにしても、法の範囲内で規定せざるを得ませんし、隣接する市に出店する事例には法に規定された県の調整機能に委ねることとなり、条例の制定主旨が失われてしまうものと考えられ、当面、条例の制定は考えておりません。
そこで、改正まちづくり三法の研究や先行事例である福島県の状況なども把握するとともに、県が新年度に無秩序なまちづくりに歯止めをかけるために郊外店のあり方について有識者懇談会で論議し提言をまとめることになっていることから、こうした動向を注視してまいりたいと考えております。
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次に、大型店の郊外進出は、既存商店街を大きく疲弊させてきた。その大型店が統合や閉鎖、撤退する場合、住民だけでなく市の経済、まちづくりにも大きな影響を及ぼすことが懸念される。大型店が撤退等する場合の対応策は、とのご質問にお答えいたします。
大型店が統合や閉鎖、撤退する場合、それまで大型店を利用してきた住民の利便性が低下するのはもちろんのことでありますが、市の経済やまちづくりにも多大な影響を及ぼすことは、私も十分認識しております。
当市における典型的な事例としては、高田本町の長崎屋が挙げられるところであります。市といたしましては、地域や関係市民の要望にこたえて周辺への影響を最小限にとどめるため、本町商店街の中核的な位置付けという認識のもと、市民の芸術・文化を発表する場として、市民アートギャラリー・雁木通り美術館を開設することによって懸命な引止め策を講じたことは、ご案内のとおりであります。
そのような努力にもかかわらず、平成14年2月には撤退してしまい、中心市街地に空洞化をもたらしてしまいましたので、新たなテナント誘致など、積極的な支援をしてきたところであります。
しかしながら、市の貴重な財源を投入して何とか維持するというような対応が必ずしも望ましいものではありません。前段で議員が提案された市独自の条例を制定し、撤退等の事業者責任を明確にするという方法も考えられますが、先ほども申し上げたとおり、法の範囲を逸脱して条例化することはできませんので、有効な手段になりえないものと考えております。
こうしたことも踏まえながら、国に対して、撤退時には事業者のまちづくりへの責任を明確にするよう求めてまいりたいと存じますし、万一、市民生活やまちづくりに大きな影響を及ぼす事態が生じることがあれば、市民の皆さんとも十分に話し合いながら、空洞化対策に努めてまいります。
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次に、企業・工場等の進出に優遇措置を講じているが、その優遇措置を受けた企業が閉鎖、撤退する場合の対応策についてのご質問にお答えします。
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企業や工揚等の進出への優遇措置については、上越市企業振興条例に基づく企業奨励制度を始め、土地取得に対する補助制度や融資制度などを設けております。これらは企業の進出や新たな設備投資を促進し、当市の経済活性化や新たな税源酒養につなげる重要な施策であります。
企業奨励制度は、企業が一定規模を超える設備投資をした場合、納付した固定資産税の一部を奨励金として交付するものでありますが、このたび制度を改正し、大企業には一定の雇用確保を義務付けさせていただきました。また、土地取得に対する補助金については、10年以上の操業を条件にした制度であり、それぞれ地域に対する貢献を求める制度となつております。
企業の進出や新規の設備投資には、莫大な費用を要し、企業にとって、まさに経営戦略の根幹を成すものであり、十分な検証と長期的な視野に立った判断の下に実行されることから、短期間での撤退や閉鎖は稀有な事例と受け止めております。
しかしながら、社会経済情勢の変化などによって、やむを得ず閉鎖または撤退を余儀なくされることもありましたが、市といたしましては、企業と情報交換を行いながら、地域への影響を最小限に抑えるよう、雇用確保の継続など働きかけを行ってきたところであります。
また、工場の閉鎖や撤退により、地域住民やまちづくりに影響がでないよう、撤退後の工場等については、上越テクノセンターのように官民一体となり企業誘致を進めてきた事例もありますし、また、他の企業に活用の打診を行うなど、積極的に関与してまいりました。
企業にとって、経営の縮小や閉鎖は苦渋の選択であり、行政としての関わりも限られますが、その影響が最小限となるよう努めてまいります。
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